最近、あまり聞かなくなってしまった音楽を再び聞くようにしています。
だいぶ遡ること20年前。
高校生の時はショパンばかり聞いていました。
最近ふと聞きたくなった曲がありMP3で聞いていたのですが、YouTubeで動画がないかな、と探してみたら見つかりました。
ショパンのピアノソナタ3番の第4(最終)楽章です。
ちょっと軍隊が行進しているような感じがしてかっこいいですよね。
このアインシュタインみたいな頭をしたピアニストは「シプリアン・カツァリス」という人です。
昔、NHKで放送されていた「ショパンを弾く」という番組に出演していました。
クラシックは作者の演奏の録音が存在しないので、ピアニストは楽譜から作者がどのように演奏して欲しかったのかを自分なりに解釈して演奏します。
そのため、同じ曲でも人によって全然演奏が異なるのです。
で、このカツァリスは面白い解釈をするのです。
大体どのジャンルの曲にも主となるメロディーがあり、それを繰り返すのが多いです。
そして繰り返される時は伴奏が変わったりするなどして、曲が単調にならないようになっています。
カツァリスが面白いのは、そこにさらに独自の解釈で、曲の中から独自にメロディーを引っ張りだしてしまうところです。
具体的にどういうことかというと、普通の曲は大体一番高音がメインメロディーでそれ以外が伴奏というパターンが多いです。一番低音がメロディーで、それ以外が伴奏というパターンもありますけどね。
で、彼は和音の中から高音でも低音でもない真ん中辺りの音をメインメロディーとして取り出して強調して演奏してしまうのです。
「ショパンは繰り返されるメロディーが同じであることを嫌ったので、そうやって演奏するのが正しいのです」、というのが彼の解釈です。
実際に演奏を聴いていると、不自然に中音が強調されている部分が出てくるので分かると思います。
さらにカツァリスのすごいところは、ベートーヴェンの交響曲全集をピアノだけで演奏してCDで出しているところです。
あの長い交響曲を一人で演奏してしまうところがものすごい!まさに超人ですよね。
貼り付けてあるYouTubeの動画でも分かるかと思いますが、ほとんど鍵盤を見ていません。
あまりにも簡単そうに弾いているので簡単な曲かと錯覚してしまいますが、これは難しい曲です。
彼らピアニストというのは、どんな難解で超絶技巧な曲でもめったにミスすることなく弾きこなすことができるのが最低限の条件なのです。
大工さんが家を建てられるのが当たり前なのと同じ感覚です。
差別化を図るために独自の解釈をし、それを実際に弾きこなし、聴衆に気に入ってもらえるかが人気ピアニストになれるかどうか、という非常に高い次元で勝負をしているのです。
彼らは起きているほとんどの時間、ピアノを弾き続けているそうです。
当然、物心がつくかどうかという年齢からピアノ漬けな生活ですしね。
ボクはピアニストやヴァイオリニストなどのクラシック演奏家という職業が、この世で一番狭き門なのではないかと思っています。